ムスカブースト

説明しよう。ムスカブーストとは、鬱状態から回復の兆しが見えた頃に、鬱の遅れを取り戻そうと本を読み漁る状態のことである。尚、この名称は私以外に使われてはいない。たぶん。

 

サブカルオタクなので、天空の城ラピュタムスカ大佐がラピュタ語を解読して興奮している状態になぞらえてしまう。鬱がひどい時に本を読もうとすると、文字は遊離し、虫のように空気中に這い出ていったような感覚があった。性暴力関係の本は頭に入りすぎるほどくっきり文字が目に飛び込んできた。ゴシック太字18ptくらいで、どーんどーんと頭の中を地ならししながら進んでいく。歩みを止めたいのに目が文字を追ってしまう。読み終えて知恵熱のようなものを出していた。

 

本って不思議だ。私の体はここから動いていないのに、意識はとぷんと沈んでいく。私の体は遥か遠く空の向こうにあって、意識が底に降り立ったと思い顔を上げたら作者の影が佇んでいる。その優しい影にささっとついて行く。複雑なステップを踏む作者もいれば、ついてきてるか振り返ってくれる作者もいる。その背中や足跡がとても愛おしい。

 

本を読める状態になって恍惚の表情を浮かべているんだろう、私は。眠っていた時間を取り戻すように手に取って行くけれど、ガス欠になってはいけない。お茶を一口飲んで、体の感覚を思い出す。ふうと一呼吸。そして再び意識は本の底に沈んでいくのだ。f:id:miumimimi:20230124195616j:image